前章では、Dynamics 365 の用途・機能・利用シナリオについて述べてきました。高機能かつ、これまでのマイクロソフト製品とのシームレスな連携が魅力の製品です。そして、Dynamics 365 の魅力は決して機能だけではありません。
Dynamics 365 導入における基本的なコストであるライセンスはどのくらい必要なのでしょうか? 他社の CRM システムと比較をしつつ、Dynamics 365 のライセンス費用についてご紹介します。
※ 2018年12月01日時点の費用やライセンス名称を元に比較をしています。
目次
Dynamics 365 のライセンスコスト
最初に結論をお伝えすると、他の CRM システムと比較して Dynamics 365 はコストパフォーマンスが高いです。
CRM システムは大きくわけると 「高機能」か「安価」の2種類に分類されますが、Dynamics 365 はこの両方の特性を持っています。それがどういうことなのか、なぜハイコストパフォーマンスであるのかを、他製品と比較しながら説明していきます。
高機能かつハイコストな CRM システム
顧客管理・営業自動化・マーケティングオートメーションなどの機能、Office 365 や G Suite などの業務システムとの連携など、様々な用途に合わせてカスタマイズできる高機能型の CRM システムといえば、Salesforce や Zoho CRM などが有名です。これらは幅広い業種に合わせて開発された CRM システムで、「こういう機能があれば嬉しい」というニーズをとらえています。特に、Salesforce は、セールス・マーケティング・サービス・コマース・コミュニティとどの業種にも対応できる万能な CRM システムです。
ただ、高機能な分、ライセンス費用は現時点でも月額 18,000円と高めであります。月額 3,000円のライセンスも利用できる人数の上限と機能制限があるので、フル機能を活用するのであれば不十分です。
安価で基本機能のみの CRM システム
安価で始められる CRM システムも存在します。ユーザー数が無制限で 月額 9,800 円で SFA 機能を使うことができる CRM システムや、月額 1,000 円などのシステムも検索をすれば存在しています。機能も SFA に特化しており、顧客情報管理やタスク・スケジュール管理、メール送信などの必要最低限の機能がそろっています。
ただ、ほとんどのシステムが、SFA や CRM のみに特化しているため、営業やマーケティング以外の部署でシステムを導入する場合は、他の特化型システムを探してくるしかないでしょう。そうなると、組織内に部署や業務ごとに複数の企業のシステムが混在することが起こりうる結果となります。
システム作成会社が異なれば、その仕様も異なります。もし SFA として導入したシステムと、カスタマーサポートで導入しているシステムのデータを連携したい場合、それらのデータをプログラマーを雇い開発するコストが必要になります。それらのコストを含めると、ライセンスコストが安価であるだけでシステム導入を決定することはリスクなのかもしれません。
高機能で安価な Dynamics 365
このように、「高機能で高価」なのか、それとも「標準・必要最低限の機能で安価」なのか、どちらかを選ばなくてはいけなかった状況が、Dynamics 365 のライセンス形態により変わりました。Dynamics 365 は Salesforce や Zoho CRM と同等の高機能でありながら、月額 1,000円のライセンスと月額 12,500円 のライセンスを組織の利用者比率を見ながら調整することができるのです。
これはどういうことかというと、管理者に必要なフル機能では 月額 12,500円 のライセンス、通常の利用であれば 月額 1,000円のライセンスと利用するライセンスを組織に合わせて選択できるということです。ほとんどの企業では、管理権限を保有するユーザーは少数であると思います。データを追加・編集する、レポートやダッシュボードを使うなどの用途であれば月額 1,000円のライセンスで十分です。
例えば、情報システムのようなシステム管理者となる部門の人数が 20名、その他の一般ユーザー(部課長などの部門管理職を含め)が 200名の企業の場合、月額 18,000円のライセンスが必要な高機能な Aシステムと、Dynamics 365 の年間ライセンスコストを計算すると..
高機能 A システムの場合
管理者 | 18,000 円 x 20 名 x 12ヶ月 = 4,320,000 円/年 |
一般 | 18,000 円 x 200 名 x 12ヶ月 = 43,200,000 円/年 |
合計 | 47,520,000 円/年 |
Dynamics 365 の場合
管理者 | 12,500 円 x 20 名 x 12ヶ月 = 3,000,000 円/年 |
一般 | 1,000 円 x 200 名 x 12ヶ月 = 2,400,000 円/年 |
合計 | 5,400,000 円/年 |
ほぼ同等の機能Aシステムと比較しても、1 年間で 42,120,000 円 の差が生まれます。社員数(外部協力メンバーも含め)は企業成長とともに増えるのであれば、この差額は広がる一方です。「ただ安価だから」という理由で見るのではなく、企業の成長も見越して業務システムを選択することはとても重要だとわかります。
Dynamics 365 のライセンスの種類
それでは、Dynamics 365 のライセンスはどういったものあるのでしょう? また、ライセンスにより使える機能は何があるのでしょうか。
現時点のライセンス名と費用についてご紹介します。
※なお、マイクロソフト製品およびライセンスについては、マイクロソフト社のビジネスに合わせて名称や価格を少しずつ変えるため、ここでは現時点での情報を記載しています。
Dynamics 365 の価格 というページをみると価格が記載されています。
引用元:Dynamics 365 の価格
Customer Engagement Plan
Customer Engagement Plan は月額 12,500 円で以下の Dynamics アプリケーションを含みます。
- Sales
- Customer Service
- Project Service Automation
- Field Service
- Marketing (※)
(※) Customer Engagement Plan を 10ライセンス以上利用すると、Marketing (+ 2000の連絡先まで)のアプリケーションも利用可能になります。
さらに、アプリ開発や自動処理を行うことができる以下のアプリケーションも利用可能です。
- PowerApps for Dynamics 365
- Flow
もはや、Dynamics 365 Customer Engagement Plan は単なる営業支援ツールではないことがわかります。組織内の、営業・ヘルプデスク・システム開発・マーケティング・フィールドサービスのすべての領域を1つのライセンスで管理できます。
一般ユーザー向けライセンス
Team Members というライセンスは、一般ユーザー向けのライセンスで、月額 870円になります。上述した月額 1,000円程度のライセンスはこのライセンスを指しています。ライセンスガイド では、「追加ユーザー」として定義されており、取引先や活動の更新、レポートやダッシュボードの利用など基本的な機能は有しており、一般ユーザー向けで利用できます。
追加ユーザーは、基幹業務システムのデータやレポートを利用したり、時間/費用の入力や人事記録
の更新といった簡単な業務を行ったりする組織内の大部分のユーザーのほか、システムを多用するも
ののフル機能は必要ないというユーザーが該当します。これらの追加ユーザーは、Dynamics 365
Team Members、Dynamics 365 Operations – Activity、Dynamics 365 for Talent サブスクリプション
によってライセンスを取得します。
引用元:ライセンスガイド
個別アプリケーションの値段
包括的にアプリケーションを利用する必要がなく、個別に Sales や Customer Service のみを利用することも可能です。
以下のアプリケーションは、月額 10,300円です。
- Sales
- Customer Service
- Project Service Automation
- Field Service
Marketing に関しては、月額 81,570円からになっています。
このように個別アプリケーションを購入することは可能ですが、Customer Engagement Plan と金額差は少なくとも機能差があるので、Customer Engagement Plan を購入するほうがお得に思えます。
その他、人事やリテール、AX機能の3種類を含めた Unified Operations Plan 、すべて含めた Dynamics 365 Plan についての価格は記載されておらず、こちらはマイクロソフト担当者へお問い合わせが必要になります。
比較表は以下です。
引用元:Dynamics 365 の価格
ライセンスを購入するにはどうしたらいいか?
これまでライセンスとそれに伴う機能について十分理解することができました。もし Dynamics 365 のライセンスを少数でもいいので購入して利用してみようと思えば、次は購入方法です。
ライセンス購入手順は次回に記載していますので、ご確認ください。
それでは、ライセンスについてはこれまで。